ペダリングのしやすさは上死点通過がスムーズかどうかで決まる。

いろいろな長さのクランクで試したけれど、165mm以上のクランクになると上死点通過が困難になる。つまり、死点での出力はゼロ近くまで落ちる。長いクランクはピークトルクの勢いでクランクを回している。上死点通過対策としてよく言われるのが引き足を使うということ。引き足は下死点通過をスムーズにするもの。しかし、引き足は足の筋肉のダメージを考えると得策ではない。


上死点通過をスムーズにするにはクランク長さを短くする必要がある。140mmになると死点が消えたようにスムーズなペダリングが可能となる。しかし、ピークトルクが低くなるためか登坂能力が低くなる。だから、140mmクランクの用途は平地走行がメインのシティユースに向いているようだ。


150㎜クランクになると、上死点通過は比較的スムーズであって登坂能力も向上する。アップダウンのコースなどには有効のようだ。


160mmクランクは、上死点通過はかろうじて何とかなる。ピークトルクが高いため登坂能力に優れヒルクライムなどに向いている。


140~160mmクランクは前傾せずに坂を登れるように設計が可能だ。しかし、165mm以上のクランクになると前傾せざるを得なくなる。前傾せずにペダリングすると腰などへの負担が大きくなる。セミリカンベントの失敗はこの辺のペダリング設計にある。さらに、股下寸法の短い人にとってはその負担がさらに大きくなる。

なぜ165mmクランクが標準になってしまったのかは私にはよくわからない。

多分、前傾姿勢タイプでこれ以上短くするとトルク不足になるためだったのだろうか。

子供車の設計はまだやったことがないが、子供は上死点通過がうまくできない場合がある。早く自転車に乗れるようにする方法にクランクなしの地面をけって走る自転車が有効なのはその辺にある。


短いクランクほどフレーム設計は難しくなるが、スムーズなペダリングを体験してしまうと長いクランクには抵抗を感じるようになってしまう。
165mmクランクが長いからと言ってフレームを変えずに160mmクランクに付け替えるのはやめたほうがいい。クランク長さを変えるにはフレーム設計もやり直さなければならないからだ。