自転車を開発するということは、部品を開発するということではない。

自転車を開発するということは、丸っと1台開発するということだ。

例えば、子供乗せ自転車のスタンダードは20インチロングホイールベース車が当たり前になってしまったが、その原型は1994年には私が既に開発済みのアイデアである。

丸っと1台開発すると、新しい部品も必要になってくる。部品が先にあるのではなく完成車が先にあるのである。既存部品で使えるものがあればそれに越したことはないが。

今の自転車業界はまるっきり反対で、シマノの部品を付けるために完成車を作っている。だから、日本には完成車メーカーがなくなり、アッセンブルメーカーに甘んじているわけである。

完成車メーカーの仕事は車種開発である。前後に子供を乗せて走る自転車が無かったら、それを開発するのが完成車メーカーの仕事だ。

前傾しないで、楽に走れる自転車がなかったら、それを開発するのが完成車メーカーである。

電動アシスト車の設計がいかにいい加減かということは、バッテリーが切れたらすぐ分かる。

しかし、自転車の既成概念を打ち破るには時間がかかる。

私は25年の歳月をかけてようやく、既成概念を打ち破る自転車の開発に成功した。

ショートクランクと言う考え方が今注目されている。今までは165mmや170mmがスタンダードとされてきたが、150mm以下のクランクのほうが良いのでは?と考える人たちが現われた。でも、ショートクランクを議論する時、フレームのジオメトリーについて誰も触れてはいない。

クランク長さを変える場合、専用のフレームが必要という話は私以外の人からは聞こえてこなかった。

140mmクランクは回し易い反面、登坂能力が弱点であった。その時、フリーパワーのことを思い出して、フリーパワーなら登れなかった勾配を登れるかも?とある日ひらめいた。

それからはとんとん拍子で量産化まで一気に進んだ。もし、フリーパワーに140mmクランクが無かったらこうはならなかったかもしれない。

もし、エクタープロトンのフレームが無かったらこうはならなかったであろう。
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自転車は理論や能書きをいくらたれてもしょうがない。試乗してみれば、理屈抜きで分かってしまう乗り物である。

2輪車の運動力学的な証明はまだ解明されていない。そんな理屈など分からなくても、練習すれば倒れずに自転車に乗ることが出来る。なぜ倒れないのかよくよく考えると不思議である。

自転車はもう開発しつくして何も変えることはできないなんて考えている人が沢山いる。

しかし、自転車はまだまだ謎だらけである。人間がエンジンなのだから、人間の研究も必要だ。

そう考えると、ヒューマンパワーを効率よく使える自転車の開発はまだ始まったばかりである。